欧州の道路を走る未来の車:3Ccarプロジェクトで高度自動化車両の信頼性と堅牢性を向上

2019/09/10 | マーケットニュース

2019年9月10日、ミュンヘン(ドイツ) 

2030年までには、新規に登録される車両の50%が電動車両となり、インターネットに常時接続され、自動運転が導入されると予測されています  [1]。このような劇的な機能性の向上には、電気モビリティと高度な自動運転を支える車両アーキテクチャの新たなシステムアプローチが必要となります。従来の車には2014年の時点ですでに70~100個のネットワーク接続された電子制御装置(ECU)が搭載されており、この数字は環境適合性、効率性、安全性、利便性への要求の高まりに伴って増え続けています。欧州の研究プロジェクト「低価格電動自動車における複雑度制御のための集積化部品」、略称「3Ccar」 [2]は、このような課題に取り組む目的で設置されました。14カ国の48のパートナーが、革新的な高度集積化半導体を利用したソリューションを検討し、発表してきました。 

「私たちの意欲的な目標を達成するために必要なのは、強力な欧州のエコシステム、イノベーション、そして主要な戦略的研究プロジェクト間の長期的な連携です」と、インフィニオン テクノロジーズ オーストリアのCEOで、 ECSEL共同事業 の理事長を務めるザビーネ ヘーリシュカは述べています。 

インフィニオンは、このプロジェクトの統轄と取りまとめを担当しました。プロジェクトは欧州連合(EU)、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)、その他の参加国や業界パートナーの資金助成を受け、研究予算は総額5,400万ユーロにのぼりました。この3Ccarプロジェクトは2015年に開始され、41カ月にわたって実施されました。これまでにドイツの11のパートナーが研究結果の最終報告書を発表しています。 

パートナー各機関の最優先の目標は、複雑度を緩和しながら、同時に自動化電気自動車の信頼性を高めることでした。3Ccarプロジェクトではこの目標に向けて、車両アーキテクチャを「車両ドメイン」と呼ばれるものに再構成する新たなシステムアプローチを開発しました。これらのドメインにより、機能的かつタスク指向の調整が可能になります。必要条件が増える中でも複雑性が緩和され、自律型電気自動車の開発が大幅に簡素化されます。 

車両アーキテクチャ

エンジン制御装置(ECU)は各ドメインに統合され、各ドメインからステアリング、ブレーキ、ドライブなどの各機能が制御されます。そのため、少数の強力なドメインコントローラを使用することになります。これらのコントローラには、インフィニオンがすでに供給しているAURIX TMマイクロコントローラのようなマルチコア車載プロセッサが利用されます。例えば、従来型のパワートレインはそれ自体が一つのドメインを有します。ECUの数を減らし集積レベルを高めることで、複雑度が抑えられるとともに堅牢性も向上します。  

スマートバッテリー

今までの自動車用バッテリーはケーブルの量がかなり多いため、コストが高い割に信頼性が低いという問題がありました。3Ccarプロジェクトでは、ドイツのフラウンホーファー研究機構の集積システム・デバイス技術研究所(IISB)および生産技術・オートメーション研究所(IPA)と協力し、将来の電気自動車とハイブリッド車に使用されるバッテリーのためのモジュラー型で柔軟性の高いコンセプトを新たに開発しました。センサーや電子部品はバッテリーパックのレベルではなく、バッテリーセルネットワークに統合されます。これはまったく新しいアプローチで、バッテリー管理を簡素化するとともに、将来的には競争力のある価格の「欧州製スマートバッテリー」を生産するという選択肢をもたらすものです。このシステムは個々の部品の数が少なくなるため、誤動作が起きにくくなり、車両アーキテクチャの堅牢性向上につながります。  

燃料電池セルの安全遮断機構

3Ccarプロジェクトでは、インフィニオン、ダイムラー、フラウンホーファーIISB、ランゲ・アビエーションの協力により、燃料電池セルの放電用の安全遮断機構を新たに開発しました。現在入手できる競合製品と比べ、この遮断機構はより小型で、再使用が可能です。既存のコンセプトでは、作動プロセスで破壊されるため一度しか使用できませんが、この新たな仕組みでは燃料電池セルに対象を絞ってショートさせることができるため、その後も何度か繰り返し使用できます。 

駆動モータ

3Ccarプロジェクトではシーメンスと協力し、類似製品より高い電力密度を特徴とする電気駆動モータを開発しました。小型の構造により、空間の制約が厳しいときでも高い車両性能を発揮できます。さらに、効率と信頼性も向上しています。  

電気自動車の経路探索

アンベルク=ヴァイデン応用科学大学は、電気自動車専用の車両対ネットワーク間通信(V2N)を開発しました。目標としたのは、現在の経路探索プロセス全体を引き受けることが可能な基本的サービスの開発です。道路網における経路探索用のサーバーベースのシステムを配備し、充電ステーションの情報を統合しました。このサーバー制御の経路探索システムにより、特に電気自動車に適した最適な経路を選択できるようになりました。 

3Ccarプロジェクトで開発された技術については、自動化電気自動車に関するイベント「ECA2030」において公開されました。詳細については3Ccarプロジェクトのウェブサイト( https://3ccar.eu/)をご覧ください。 

ドイツの 3Ccar パートナー

インフィニオン テクノロジーズ株式会社

Am Campeon 1-15, 85579 Neubiberg

AVLソフトウェア アンド ファンクションズ有限責任会社

Im Gewerbepark B27, 93059 Regensburg

ダイムラー株式会社

Mercedesstrasse 137, 70327 Stuttgart

フラウンホーファー研究機構

Hansastrasse 27c, 80686 Munich

バイエルン発動機製造株式会社(BMW)

Petuelring 130, 80788 Munich

シーメンス株式会社

Wittelsbacherplatz 2, 80333 Munich

ドレスデン工科大学

Helmholtzstrasse 10, 01069 Dresden

東バイエルン工科大学アンベルク=ヴァイデン

Kaiser-Wilhelm-Ring 23, 92224 Amberg

OFFIS情報工学研究所

Escherweg 2, 26121 Oldenburg

ランゲ リサーチ エアクラフト有限責任会社

Brüsseler Strasse 30, 66482 Zweibrücken

NXPセミコンダクターズ ドイツ有限責任会社

Stresemannallee 101, 22529 Hamburg

[1] 年間新規車両数10万台とした場合の、電気モビリティと自動運転の市場発展の潜在性に関する3Ccarの仮説。

[2] 3Ccar = Integrated C omponents for C omplexity C ontrol

 

Information Number

INFATV201909-099j

Press Photos

  • Logo of 3CCar, the European project “Integrated Components for Complexity Control in affordable electrified cars”
    Logo of 3CCar, the European project “Integrated Components for Complexity Control in affordable electrified cars”
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