インフィニオンテクノロジーズが2003会計年度(9月決算)の通年業績を発表
世界第6位の半導体メーカーである独インフィニオンテクノロジーズが、2003年9月末に終了した2003会計年度決算を発表し、年 間売上高が61億5,000万ユーロと対前年度比で26パーセント増を示したと発表しました。純損益は4億3,500万ユーロの赤字となりましたが、赤字幅は前年度の10億2,000万ユーロから縮小し、E BIT(利息・税引き前損益)の赤字は2億9,900万ユーロと前年度の11億4,000万ユーロから大幅に改善しました。EBITは第1四半期と第4四半期に大きく改善しましたが、第 2四半期と第3四半期の赤字増を相殺するには至りませんでした。第2および第3四半期には、DRAM価格の急落、他の大半の部門での価格圧力、さらにユーロの対ドル高が圧迫要因となりました。第 4四半期にはロジックICとメモリICの両分野はともに増収をみせました。有線通信グループを除けば、年間EBITは黒字となり、生産性向上、販売数量の大幅な伸び、DRAM価格改善などが寄与しています。
メモリ製品グループでは、需要増と生産コスト低下が指摘されるほか、2003年(暦年)下半期に入ってメモリチップ価格が上昇しています。同 グループの2003年度の売上高は対前年度比34パーセントの伸びとなりました。これは生産性向上や生産能力拡大およびビット需要の増加を反映して生産量が増大したことによるものです。自動車&産業グループでは、 世界的な自動車市場低迷にもかかわらず、四半期ベースでも年間ベースでも、売上高は前年度の水準を上回りました。セキュア・モバイル・ソリューションズ・グループは第4四半期には、自動車&産業グループと同様、 E BIT黒字を計上し、売上高は対前年同期比27パーセントの伸びを示しました。有線通信グループは、前年度に比べると売上高、EBITともに大きく改善しましたが、世界の通信事業者の投資削減、需要低迷、全 般的な価格圧力というマイナス材料は相変わらずでした。
インフィニオンテクノロジーズのウルリッヒ・シュマッハ社長兼最高経営責任者(CEO)は、「当社は2003年度第4四半期に再び黒字を達成しました。これは当社の成長戦略と生産性向上計画「 インパクト2」を持続的に実行している成果です。2003年度年間では売上高は26パーセントの増加となりました。すべての事業グループが順調な軌道上にあり、今後さらなる改善をみせるでしょう」と、語りました。
2003年度の1株当たり(基本および希釈)欠損額は0.60ユーロ(前年度は1.47ユーロ)に縮小しました。研究開発費は10億9,000万ユーロで、売 上総額に対する研究開発費の比率は18パーセントでした(前年度は10億6,000万ユーロ、同22パーセント)。SG&A(販売費および一般管理費)支出は、総 売上高の11パーセントに相当する6億7,900万ユーロでした(前年度は同13パーセントの6億4,300万ユーロ)。
地域別売上高をみると、欧州以外の地域が総売上高の57パーセントを占め、その比率は前年度の55パーセントから上昇しました。こ れはすべての成長市場で販売および市場シェアの拡大を目指す戦略プログラム「Agenda 5-to-1」の目標に沿ったものです。総売上高のうち北米は23パーセント、ア ジアは34パーセントの割合を占めました。2003年度には当社は市場ランキングで欧州で第2位の地位をさらに強固にし、北米では前年度の第7位から第5位に、ア ジアでは第8位から第6位にそれぞれ上昇しています。
現地での貢献を強化し、一段と市場浸透をはかるため、当社は新たな提携を進めたほか、特に米国東岸部とアジアに新事務所を開設しました。
特に注力しているのが中国の半導体市場です。中国では当社は現在5パーセントの市場シェアを持っており、2007年までに10パーセント以上へ伸ばす目標です。2 003年3月には中芯国際集成電路製造(SMIC)とのDRAM生産の既存ファウンドリ契約を拡大しました。SMICの200mmウェハ製造ラインからの出荷はすでに2003年9月に開始されています。また、中 国-シンガポール蘇州工業園区ベンチャー社(CSVC)と合弁で、メモリICの組立および試験(後工程)を行う施設を建設中です。さらに、インフィニオンは2003年9月に、上海に新たに中国本部を開設しました。 現在、当社は中国で約800人を雇用しており、さらに現地従業員を3,000人以上に増やす計画です。加えて、インフィニオンは台湾の南亜科技と、合弁会社「イノテラ・メモリーズ」の 設立と先進技術の開発協力を目的としたDRAM提携契約を結びました。
9月30日現在のインフィニオンの総従業員数は世界全体で約3万2,300人で、うち北米とアジア(日本を含む)が34パーセントを占めています。総 従業員のうち約5,900人が研究開発関係に従事しています。
2003年度第4四半期の決算
2003年度第4四半期の売上総額は17億6,000万ユーロで、対前四半期比19パーセント、対前年同期比では37パーセントの増加をみせました。純 損益は4,900万ユーロの黒字となり、前四半期の1億1,600万ユーロの赤字、前年同期の5億600万ユーロの赤字から好転しました。EBITは6,700万ユーロの黒字で、前 四半期の1億1,600万ユーロの赤字、前年同期の2億9,500万ユーロの赤字から転換しました。この改善は主に、メモリチップ価格の上昇、一層の生産性向上および台湾のプロモス持ち株売却利益によるものです。
DRAM業界の独禁法調査
2002年6月から、米司法省がDRAM業界の米国連邦独禁法違反容疑の調査に乗り出しています。インフィニオンの米子会社がその調査に応じています。米司法省の調査開始に続いて、米 国各地の連邦および州の裁判所でインフィニオンを含むDRAMサプライヤを相手取った計24件の提訴がなされました。訴状では、原告側は連邦および州の反トラスト法や競争制限防止法の侵害を訴え、大 きな損害を被ったと主張しています。インフィニオンはまた、2003年4月に欧州委員会から、欧州のDRAM製品市場の商行為に関する情報提供を命じられ、それに応じています。現時点では当社は、そ うした調査や訴訟が当社の財務などにどれほどの影響を及ぼすかについては予測できません。そうした調査や米国会計基準(GAAP)に対応するため、当 社は2003年度第4四半期に2,800万ユーロの引当金を計上しました。
第4四半期の事業グループ別業績
2003年度第4四半期の事業グループ別実績に関しては、自動車&産業グループの売上高は3億5,300万ユーロで、対前四半期比で1パーセント増、対 前年同期比では10パーセントの伸びを示しました。対前年同期比の伸びには、自動車用パワー半導体とパワーマネジメント&サプライ用ICの販売増が寄与しました。2003年度には世界市場は全体的に低調でしたが、 当社自動車&産業グループの年間売上高は13億9,000万ユーロに達し、過去最高を記録しました。
自動車&産業グループは、特定用途パワー製品でデザインウィン(設計採用)を多数獲得し、また、「TriCore」マイクロコントローラで米国のパワートレイン市場に参入しました。日 本でも主要自動車メーカーのプロジェクトを成約しました。また、ノルウェーのセンソノール社買収により、自動車アプリケーション用センサのラインナップが大幅に補強されました。産業用分野では、パ ワーマネジメント&サプライ関係の新技術(OptiMOS2、CoolMOS、SiC)を立ち上げました。
有線通信グループでは、四半期売上高が7期連続で伸びを達成しました。第4四半期の売上高は1億2,200万ユーロで、対前四半期比で3パーセント増、対前年同期比では16パーセント増をみせました。 特に光通信製品の販売増が寄与しました。2003年度の年間売上高は4億5,900万ユーロで、前年度を19パーセント上回りました。
有線通信グループは2002暦年に、アクセス市場(在来通信とブロードバンドの両方)での地位を一段と強めました。同グループは次世代高速ブロードバンド・アクセス技術では先導ベンダとなっており、ア ルカテル社やシーメンス社などの主要ADSLシステムプロバイダの大半からデザインウィンを成約し、アジアの顧客企業からはVDSL/10BaseSの大口デザインウィン70件以上を獲得しました。光 トランシーバ市場では、データ通信とストレージ・アプリケーションに的を絞ることによって、ランキングを2002暦年の4位から2003暦年上半期には3位に上げました( 市場調査会社iSuppliの2003年9月のレポート)。同グループはまた、4ギガビットFibre Channel VCSELトランシーバを開発しました。
セキュア・モバイル・ソリューションズ・グループの第4四半期の売上高は4億7,000万ユーロで、対前四半期比で21パーセント、対前年同期比で27パーセントの著増をみせました。前 四半期からの増加は、強い季節需要効果のほか、ベースバンドICや高周波チップなどのワイドエリア無線製品の需要増、モバイル・プラットフォーム、ローカルエリア無線製品(DECTやBluetooth)お よびセキュリティ&チップカード・ソリューションの需要拡大によるものです。2003年度の年間売上高は16億5,000万ユーロで、対前年度比29パーセントの伸びとなりました。
セキュア・モバイル・ソリューションズ・グループでは、全分野で強い価格圧力があるものの、2003年度には米国やアジア(特に台湾と香港)を中心に、全国IDプロジェクトや決済、移 動通信関係の市場で一段と地位を強化しました。調査会社ガートナーによると、インフィニオンは2002暦年には世界のチップカード用IC市場で6年連続で市場のリーダーとなりました。さらに、高 周波ICとBluetoothソリューションの市場でシェアを伸ばし、携帯電話プラットフォーム事業で大幅な増収を達成しました。GSMおよびGPRS標準向けに開発したベースバンド・コントローラ「 E-GOLD」ファミリの販売も増加しています。
メモリ製品グループの第4四半期の売上高は7億6,500万ユーロで、対前四半期比で34パーセント、対前年同期比では75パーセントの急増をみせました。対前年同期比の伸びは主に、メ モリ製品の平均販売価格の上昇、ビット・ベースの大幅な出荷増および一層の生産性向上によるものです。2003年度の年間売上高は24億9,000万ユーロで、対前年度比34パーセントの伸びとなりました。
iSuppliによると、インフィニオンは2003暦年上半期には、2002暦年と同様、世界のDRAMサプライヤの第3位にランクされています。独 ドレンデンで300mm量産がスタートしてわずか1年後の2003会計年度第1四半期に、この施設は採算分岐点に到達しました。以後、ビットあたりコストは200mmより安価になっています。2 003年度末時点で、ドレスデンの300mm生産施設の生産能力は月間ウェハ投入量3万枚に達しており、生産性は200mm施設より30パーセント以上優っています。同グループはまた2003年度第4四半期に、イ ンフィニオンの512メガビットDDR2 SDRAMを使ったインテル社のサーバ用プラットフォーム「Lindenhurst」のブーティングに成功したと発表しました。南亜科技、華邦電子(ウィンボンド)お よびSMICとの生産提携は、2004年度にインフィニオンの生産能力の一段の増強につながるでしょう。
2004会計年度の見通し
シューマッハは、「市場の好転を口にできるようになったと感じますが、油断は禁物です。当社は、2004年度には10億~15億ユーロの設備投資と2億~4億ユーロの財務投資を予定しています。市 場展望が良いほど、この数字の範囲の上限に向かうでしょう。当社は戦略目標に沿って順調な軌道を描いており、また、自動車用半導体とメモリ製品では一層の需要増が期待されます。有線通信グループでは、A DSL向けブロードバンド・アクセス市場でさらなる成長を遂げると確信しています。セキュア・モバイル・ソリューションズ事業では、2004年度には市場の成長に合わせた伸びが見込まれます」と、述べました。
備考
上記は、発表原文からの抜粋日本語訳です。財務諸表を含むプレスリリースの全文(英語版PDFファイル)は次のURLからダウンロードしていただけます:
http://www.never-stop-thinking.com/results2003/intl/INFXX200311-012e.pdf
Information Number
INFXX200311.012