最新の車載用照明が、交通安全の革命を実現
Daimler AG、フラウンホーファー研究所(Frauhhofer-Gesellschaft)、HELLA KGaA Hueck & Co、インフィニオンテクノロジーズ、OSRAM Licht AGの共同プレスリリース
2016年10月7日、ミュンヘン(ドイツ)
産業界と研究部門の著名なメンバーからなるドイツの共同研究プロジェクトにより、スマート(省スペース)で、高解像度なLEDヘッドライトの基礎が構築されました。これにより適応型ヘッドライトがかつてない局面へと進化することになります。今回のデモンストレーションモデルは、プロジェクト全体を統括するオスラム(OSRAM Licht AG)と、プロジェクトパートナーのダイムラー(Daimler AG)、フラウンホーファー研究所(Frauhhofer-Gesellschaft)、HELLA KGaA Hueck & Co、インフィニオンテクノロジーズとの協力体制のもと開発に成功しました。左右のヘッドライトには、それぞれ3つのLED光源が採用されており、光源それぞれは、個別制御可能な1,024ピクセルのLED素子で構成されます。これにより、その時々の交通状況に応じて、非常に精度よくヘッドライトを調整することが可能であるので、他のドライバーにまぶしい思いをさせることない最適な照明状況を常に保証します。照明の調整時には、道路上で想定されるあらゆるカーブも考慮されるため、周辺エリアが暗くなることはありません。さらに、車両センサーを活用することで、周辺状況を分析し、対向車線を照らすことも可能です。これによって、ドライバーは対向車両をよりクリアに認識できます。同時に、対向車両のドライバーの顔にビームライトを照らすことがなくなるので、ドライバーにまぶしい思いをさせることもありません。結果、ヘッドライトの照明を移動させることで、田舎の車道であっても暗くなることがありません。
今回のプロジェクトは、独連邦教育研究省(German Federal Ministry of Education and Research, 以下BMBF)の資金供出によるもので、ヘッドライトのデモンストレーターの生産テストとフィールドテストを経て、3年半の期間で成功裏に完了しました。オスラム オプトセミコンダクターズ、インフィニオン、フラウンホーファー信頼性 微細集積化研究所(Fraunhofer Institute for Reliability and Microintegration, 以下IZM)が導入に向けて開発したものは、個別制御可能なLED素子セルを1,024ピクセル搭載した画期的なLEDチップになります。市場に流通している現行世代の適応型ヘッドライトの場合、ヘッドライトには、複数のLEDが隣り合い、重なり合う形で取り付けられています。さらに、LED光源セグメントをオン/オフをするための電子部品も必要になります。ヘッドライトのスペースには制約があるため、セグメントの数にも限りがあります。今回の新たなアプローチでは、LEDの電子的な起動回路がチップに集積されており、これにより大幅な高解像度化を実現しつつ、限られたスペースの要件にも応えています。この画期的なスマート高解像度車載用LED光源を実現するため、第2段階として、オスラムの特殊照明部門がLEDモジュールを開発しました。本モジュールは、電気的 熱的なインターフェイスを採用しており、車両側の電子回路との直接的な接続が可能です。
今回のプロジェクトでは、システムの実用性が実証されています。スマート高解像度ヘッドライトの使用時には、進路方向や走行速度、対向車両の有無、車間距離といった、運転状況と気候状況が分析されます。こうした状況に基づき、可変型 適応型の配光により、あらゆる状況下でその場に最適な照明が保証されます。例えば、高速走行時には、ビームライトの距離が自動的に長くなります。一方、都市の交通の場合、配光範囲を広く取ることで、道路のみならず、歩行者や周辺エリアもより広範に照らすことで、安全性を向上できます。こうした機能は、機械式アクチュエータを使用せず、すべて電子的に実装されます。グレアフリー(防眩)フルビームにより、夜間時のドライバーには常に最善の照明が得られ、他のドライバーへの弊害もありません。ドライバーの認識という点で、これは揺るぎのないメリットであり、夜間走行時の事故リスクの低減に貢献する重要な要素です。
オスラムの最高技術責任者、ステファン カンプマン(Stefan Kampmann)氏は次のように述べています。「私たちの目下の目標は、この新型の高解像度LED光源を連続生産可能な製品として開発することであり、これをヘッドライトで使用することに、とてつもない可能性を見出しています」
インフィニオンが担当したのは、この画期的なLEDチップのインテリジェントなドライバ回路の開発です。このドライバ回路によって、1,024ピクセルのLED素子を一つひとつ個別制御することが可能となります。インフィニオンは、半導体製造の設計において、ドライバ回路の上層部に配置される発光LEDアレイへの直接接続に成功しました。技術面での挑戦としては、LEDドライバ向け製造技術でこの特殊な要求を実現する事にありました。インテリジェントなドライバ回路と車載用アプリケーションに関する広範なノウハウにより、インフィニオンは現在、画期的な適応型ヘッドライト照明システムへのトレンドを後押ししています。
さらに、HELLA KGaA Hueck & Coが、ダイムラーからの機能要求に基づき、LED光源の主な技術的要件を定めました。そこで同社の照明とエレクトロニクスの専門家は、照明モジュールの全体的な光学システムと冷却コンセプトのほか、プロトタイプのヘッドライトを開発しました。これらは極めて高いエネルギー効率性を誇り、極めて均一な照明パターンを生成するほか、個々のピクセルの照明品質も優れています。そのため、機械式アクチュエータを使用せず、純粋に電子的に複数の照明パターンを生成可能です。これは照明業界のデジタル化に向けた一歩となります。今回の開発により、HELLAは、顧客と協力し、顧客のために画期的な照明システムを開発し、必要な精度と品質により連続生産を行いつつ、テクノロジーについても一貫した未来志向を実現するという、自ら課した基準を達成しています。
研究プロジェクトでは、ダイムラーが、ヘッドライトシステム全体の機能要件と将来的な車両の特性を定めました。これは、ヘッドライトシステム全体の電子部品とモジュールの特性の基礎となりました。このシステムでは、将来的なセンサーと車両のアーキテクチャを考慮して最高な配光状態を計算し、この情報をピクセルヘッドライトに送信します。未来の電気自動車を考えると、エネルギー効率は、新開発LEDの重要な要求となります。スマートLEDヘッドライトを搭載したダイムラーの自動車は、実際の交通状況に基づくフィールドトライアルで使用されました。
メルセデス ベンツEクラスの現行モデルは、HELLAのマルチビームLEDヘッドライトを採用しており、各ヘッドライトには、個別に制御可能なオスラムの高性能LEDが84個搭載されています。ダイムラーは現在、より高解像度で微細なピクセルを採用したLEDヘッドライトの開発に貢献しており、照明部門のパイオニアとしての自社のポジションを確固たるものとしています。
フラウンホーファー研究所は、接続技術(LEDとIC)と素材のほか、欠陥の検出と隔離に関する能力で、プロジェクトに貢献しました。今回実現した超高解像度は、傑出した小型接続技術を活用した、これまで以上に微細な構造によるものです。この目的のため、独ベルリンにあるIZMでは、各ピクセルを個別に制御するインフィニオンのアクティブドライバ回路上に、オスラムの1,024ピクセルのLEDアレイを組み立てました。極めて良好な冷却状態で、チップを組み立てたことで、マイクロメートルサイズの高低差でバランスを取ることが可能となりました。
組立技術については、多孔性の金ナノスポンジによる熱圧縮ボンディングと、高信頼性の金錫合金によるリフローソルダリングの2種類が検証されました。いずれの組立技術も、高い歩留まりと、その後のLEDプロセスで必要な堅牢な接合部分を実現する形で、成功が実証されました。
高解像度LEDヘッドライトの技術的な課題の1つに挙げられるのが、個別に制御可能なピクセルを1,024個搭載することで、チップが比較的大きくなってしまうことです。すなわち、LEDチップの大型化は、生産プロセスの過程で、ピクセルマトリックスの個々のピクセルの欠陥や輝度低下のリスクを高めます。こうした問題を克服するため、独フライブルクのフラウンホーファー応用固体物理研究所(Fraunhofer Institute for Applied Solid State Physics IAF)は、欠陥修復のための新技術を開発しました。これは、紫外線レーザーのマイクロマシニングをベースとしたもので、生産プロセス中にLEDチップの欠陥修復を可能にします。その仕組みは以下の通りです。微視的欠陥は、慎重な材料除去を通じ、UVレーザーによって特定 除去されるか、電子的に隔離されます。その際、レーザーが意図せず新たな欠陥を引き起こしてしまう、いわゆる漏れ電流パスは発生しません。修復作業が行われると、ピクセルは輝度を完全に取り戻し、均一な「発光パターン」が再び得られます。
フラウンホーファー応用固体物理研究所のレーザーマイクロマシニング技術の経済的なメリットは、生産時の欠陥の削減のみならず、大型LEDチップの生産時の廃棄とコストの削減にもあります。すなわち、このプロセスによってLEDの平均寿命も向上するため、競争上の重要な優位性が得られるだけでなく、顧客満足も高まります。
今回の「μAFS」プロジェクトは、ファンディングID「13N12510」の下、BMBFの後援で行われました。実施期間は、2013年2月から2016年9月でした。交通安全機能が加わった、かつてない高エネルギー効率LEDヘッドライトの技術基盤として、スマート照明ソリューションを開発するという目的は、プロジェクトパートナーによって実現されました。これを受けて、ドライバーや同乗者などの道路利用者の安全性を高める適応型フロントライトシステム(AFS)の開発が可能となります。
ダイムラー( Daimler )について
ダイムラーは、世界で最も成功している自動車企業の1社です。メルセデス ベンツ カー、ダイムラー トラック、メルセデス ベンツ バン、ダイムラー バス、ダイムラー ファイナンシャルサービスの事業部門からなるダイムラー グループは、世界有数の高級車メーカー、そして世界最大の商用車メーカーとして、事業をグローバルに展開しています。ダイムラー ファイナンシャルサービスは、融資、リース、車両管理、保険、金融投資、クレジットカード、画期的なモビリティサービスを提供しています。ダイムラーは、世界のほぼすべての国で車両とサービスを販売しており、欧州、南北アメリカ、アジア、アフリカに生産施設を有しています。現在のブランド ポートフォリオは、世界で最も高価値の高級車ブランドであるメルセデス ベンツを筆頭に、メルセデスAMG、メルセデス マイバッハ、メルセデス ミー、スマート、フレイトライナー、ウェスタンスター、バーラト ベンツ、ふそう、ゼトラ、トーマス ビルト バスと、ダイムラー ファイナンシャルサービスの各ブランド(メルセデス ベンツ バンク、メルセデス ベンツ ファイナンシャル、ダイムラー トラック ファイナンシャル、moovel、car2go、mytaxi)で構成されます。同社は現在、フランクフルトとシュトゥットガルトの証券取引所に上場しています(証券取引コード:DAI)。2015年のグループ全体の販売車数は約290万台、従業員数は28万4,015人、総売上高は1,495億ユーロ、EBITは132億ユーロでした。
フラウンホーファー研究所(Fraunhofer-Gesellschaft ) について
フラウンホーファー研究所は、欧州の応用研究分野を代表する機関です。その研究活動は、67のフラウンホーファー研究所と、ドイツ各地の研究拠点によって行われています。フラウンホーファー研究所の従業員数は2万4,000人で、年間研究予算は総額21億ユーロ以上に上ります。このうち、委託契約によって18億ユーロ以上が生み出されています。フラウンホーファー研究所の委託研究売上の70%以上は、産業界との契約および公的な資金援助の研究プロジェクトによるものです。さらに、南北アメリカとアジアの支店は、国際的な協力体制の促進に寄与しています。
HELLA KGaA Hueck & Co について
HELLAは、家族所有のグローバルな上場企業であり、従業員数は約3万4,000人で、世界約35カ国で125カ所以上の拠点を有しています。HELLAグループは、自動車業界向けの照明技術や電子製品の開発と製造を行っており、自動車の部品、アクセサリー、診断技術、サービスでは欧州最大規模の小売企業でもあります。さらに、包括的な車載モジュール、空調システム、車載電気システムを合弁事業で生産しています。研究開発分野の従業員数は6,000人以上で、HELLAは現在、市場で最も重要なイノベーション推進企業の1社となっています。さらに、HELLAグループは、世界の自動車サプライヤの上位40社、ドイツの工業企業の上位100社にも選ばれており、2015/2016会計年度の売上高は約64億ユーロです。
オスラム( OSRAM Licht AG )について
オスラム(本社:独ミュンヘン)は、世界をリードする照明メーカーであり、その歴史は100年以上前までさかのぼります。同社の製品ポートフォリオは、赤外線照明やレーザー照明など、半導体技術をベースとするハイテクアプリケーションから、建物や都市で使用されるネットワーク接続型のスマート照明ソリューションまで多岐にわたります。2015会計年度末(9月30日)の全世界での従業員数は約3万3,000人で、同会計年度の売上高は約56億ユーロでした。同社は現在、フランクフルトとミュンヘンの証券取引所に上場しています(ISIN:DE000LED4000、WKN:LED 400、銘柄コード:OSR)。詳細については、 www.osram.de をご覧ください。
インフィニオンについて
インフィニオンテクノロジーズは、暮らしをより便利に、安全に、エコに革新する半導体分野の世界的リーダーです。明るい未来の扉を開く鍵になる半導体をつくることが、私たちの使命だと考えています。2015会計年度(9 月決算)の売上高は58億ユーロ、従業員は世界全体で約3万5,400人。2015年1月に、売上高11億米ドル(6月29日を期末とする2014会計年度)、従業員約4,200人の米国インターナショナル・レクティファイアーを買収しました。
インフィニオンは、ドイツではフランクフルト株式市場(ticker symbol:IFX)、米国では店頭取引市場(ticker symbol:IFNNY)のOTCQX に株式上場しています。
日本法人サイト: http://www.infineon.com/jp
本社サイト: http://www.infineon.com (英語)
Information Number
INFATV201610-001
Press Photos
-
The new LED chip with 1,024 individually controllable light points (pixels) is around as large as a fingernail. The combination of three such chips allows a resolution of 3,072 pixels per headlight. (picture: OSRAM Licht AG)OSRAM_LED-Chip
JPG | 1.17 mb | 2126 x 1417 px
-
The partners of the research alliance µAFS developed the basis for smart, high-resolution LED headlights for adaptive lighting systems. The picture shows the prototype of such a LED headlight of project partner Hella KGaA Hueck & Co. (picture: Hella KGaA Hueck & Co.)Pixelscheinwerfer_Prototyp_ON
JPG | 1.49 mb | 4752 x 3576 px
-
The partners of the research alliance µAFS developed the basis for smart, high-resolution LED headlights for adaptive lighting systems. The picture shows the prototype of such a LED headlight of project partner Hella KGaA Hueck & Co. (picture: Hella KGaA Hueck & Co.)Pixelscheinwerfer_Prototyp_OFF
JPG | 2.28 mb | 4752 x 3544 px
-
Thanks to thousands of individually controllable pixels, the new class of smart adaptive headlights can prevent glare for other road users while the other surroundings remain perfectly illuminated. (picture: OSRAM Licht AG)OSRAM_Infografik_Pixelscheinwerfer
JPG | 364 kb | 2126 x 1197 px