明日へ備える:インフィニオン、非接触型セキュリティチップでポスト量子暗号を初めて実証

2017/05/30 | ビジネス&フィナンシャルプレス

2017年5月30日、ミュンヘン(ドイツ)

量子コンピューターには、その演算能力ゆえ、現在使用されているさまざまな暗号化アルゴリズムの解読に悪用される可能性があります。セキュリティソリューションの世界大手であるインフィニオンテクノロジーズ(FSE:IFX / OTCQX:IFNNY)は、現世代のセキュリティプロトコルから次世代のポスト量子暗号(PQC)へのスムーズな移行をいつでも提供することが可能です。インフィニオンは、この度、電子パスポートに使用されている市販の非接触型セキュリティチップにPQCを実装し、その実証に成功しました。これにより、量子コンピューターの演算能力への耐性を有する暗号化の実現に向け、その先駆的なポジションを獲得したことになります。

インフィニオンのチップカード&セキュリティ事業部プレジデントであるステファン ホフシェン(Stefan Hofschen)は、次のように述べています。「インフィニオンは、非接触型セキュリティチップでポスト量子暗号を実証したことで、この分野の先進的なポジションに立ちました。当社のセキュリティソリューションは、プライベートおよびパブリックキーの信頼できる標準化されたアルゴリズムに依存しています。当社は、今後のセキュリティ脅威への対応を強化するため、学界、お客さま、パートナー企業と継続的に協力しています。また、小型デバイスや組み込みデバイスにも効率的に、かつ安全に対応できる将来的な標準規格の策定にも取り組んでいます」

現在使用されている暗号への量子コンピューターによるセキュリティ攻撃は、今後15年から20年以内に現実的なものになると予測されています。量子コンピューターが実用化されると、従来のコンピューターよりも非常に高速な計算処理が可能になり、RSAやECCといった広く利用されているセキュリティ アルゴリズムを脅かす可能性があります。 TLS(Transport Layer Security)S/MIMEPGP/ GPGなど、さまざまなインターネット標準規格は、スマートカード、コンピューター、サーバー、または産業用制御システムとのデータ通信を保護するため、RSAやECCをベースにした暗号を使用しています。「https」サイトでのオンラインバンキングや、携帯電話での「インスタントメッセージ」の暗号化などが、その代表的な例と言えます。

 

チップのメモリサイズと処理スピードが鍵を握る

インフィニオンのミュンヘン本社、ならびにオーストリアのグラーツにある非接触技術に特化した研究拠点のセキュリティ専門家たちは、この分野に画期的な進展をもたらしました。市販の非接触型スマートカードチップにポスト量子暗号の鍵交換方式を実装し、その実証に成功したのです。鍵交換方式は、暗号化されたチャネルを二者間で確立するために使用されるもので、実装されたアルゴリズムは、量子耐性暗号システムであるNew Hopeの亜種で、同システムは、Googleが同社のChromeブラウザの開発版を使用した実験でも 成果を残しています。

New Hopeアルゴリズムを共同開発しているインフィニオンのチップカード&セキュリティ事業部のトーマス ペッペルマン(Thomas Pöppelmann)は、次のようにコメントしています。「量子コンピューターというファントムは、学界やIT産業を非常に警戒させています。インフィニオンは、非接触型スマートカードにPQCを初めて実装したことを誇りに思っています。開発にあたっての大きな課題は、処理スピードの他、小型のチップサイズと限られたメモリ容量に複雑なアルゴリズムを格納し、実行させることでした。なお、トーマス ペッペルマンと共同研究者たちは、New Hopeの開発にあたり、名誉ある Facebook Internet Defense Prize 2016を受賞しています。

PQCは、量子コンピューターの世界で、現在RSAとECCが古典的なコンピューティングの世界にもたらしているセキュリティレベルに匹敵するものを提供する必要があります。一方、量子演算能力への耐性を確保するためには、鍵長をRSAの一般的な2048ビット、またはECCの256ビットよりも長くする必要があります。インフィニオンの研究者たちは、この難題を克服するため、メモリスペースを追加することなく、ゆえにチップサイズを大きくすることもなく、市販のセキュリティチップにNew Hopeを実装させるという偉業を成し遂げました。

標準化団体には、政府や業界が移行を義務化する前に、一つまたは複数のPQCアルゴリズムに関する標準規格を今後数年以内に策定することが期待されています。インフィニオンでは、スムーズな移行を可能にし、量子コンピューターの到来によって発生が予測されるセキュリティの課題に対処するため、開発および標準化プロセスに積極的に参加しています。

 

量子コンピューターについて

量子コンピューターは、従来のデバイスで使用されているビット(0または1)ではなく、重ね合わせの状態で存在することも可能な「量子ビット」を使用します。そのため、これまで以上に高速な計算を同時に実行することができ、従来では非現実的であった演算能力を必要とする問題をも解決することが可能になります。何千倍も高速で動作する量子コンピューターは、大規模データベースの検索、化学または物理シミュレーション、材料設計などに新しい可能性をもたらすものです。一方、その演算能力ゆえ、従来の技術では実質的に不可能であった現在使用されている暗号化アルゴリズムの解読に悪用される可能性もあります。

インフィニオンについて

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズは、暮らしをより便利に、安全に、エコに革新する半導体分野の世界的リーダーです。明るい未来の扉を開く鍵になる半導体をつくることが、私たちの使命だと考えています。2016会計年度(9月決算)の売上高は65億ユーロ、従業員は世界全体で約3万6,000人。インフィニオンは、ドイツではフランクフルト株式市場(ticker symbol:IFX)、米国では店頭取引市場(ticker symbol:IFNNY)のOTCQX に株式上場しています。

 

日本法人サイト: http://www.infineon.com/jp 

本社サイト: http://www.infineon.com (英語)

Information Number

INFCCS201705-056

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  • Infineon is pioneering encryption that withstands quantum computing power: The company has now successfully demonstrated the first post quantum cryptography implementation on a commercially available contactless security chip, as used for electronic ID documents.
    Infineon is pioneering encryption that withstands quantum computing power: The company has now successfully demonstrated the first post quantum cryptography implementation on a commercially available contactless security chip, as used for electronic ID documents.
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  • Thomas Pöppelmann and his colleagues from Infineon’s Center of Excellence for contactless technologies in Graz, Austria, have implemented a post-quantum key exchange scheme on a commercially available contactless security chip.
    Thomas Pöppelmann and his colleagues from Infineon’s Center of Excellence for contactless technologies in Graz, Austria, have implemented a post-quantum key exchange scheme on a commercially available contactless security chip.
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