省エネルギータイプの冷蔵庫、低燃費自動車、インテリジェントな建物管理システムから産業における省資源生産プロセスに至るまで、エネルギー効率は私たちの日常生活のあらゆる分野で非常に重要であり、これからもそうあり続けます。人間の活動におけるエネルギー効率は気候変動のスピードを緩め、環境を保護し、将来の世代のために持続可能なソリューションを生み出すための、現在そして未来において最も重要な世界的課題の1つです。ここではエネルギー効率の定義、その計算方法、エネルギー効率クラスの役割、インフィニオンによる貢献をご紹介します。
エネルギー効率とは特定の利益を得るために、資源とコストをなるべく使わずに利用可能なエネルギーを消費することを指します。ベンチマークとなるのは利益を得るために必要なエネルギーの量です。欧州では冷蔵庫などの家電のベンチマークを使ったエネルギー ラベルを適用しており、エネルギー効率を消費者にわかりやすく表示しています。エネルギー効率のクラスが色分けされており、実際のエネルギー消費量が明確に伝わるため、家電を比較、購入する際の良い指標となっています。
エネルギー効率の考え方は簡単です。家電を使用するのに必要なエネルギーが少ないほど、エネルギー効率が高いということです。エネルギー効率が高いということは経済的だともいえます。なぜなら、エネルギーの消費量を最適化し損失を抑えることで、電力や燃料、熱などの資源を節約できるからです。そのため、エネルギー効率は社会、政治、経済にとって、ますます重要になっています。
エネルギー効率は将来成長の見込める技術です。しかし、それぞれの場面で実際のエネルギー効率を計算するにはどうすればよいのでしょうか。エネルギーの利用形態によって、さまざまなパラメータがベンチマークとして算定され、専用の比較表や参照モデルで比較されています。たとえばアパートや住宅の場合、居住空間の広さ (m2)、使用している暖房の種類、エネルギーの年間消費量 (リットルまたはkWh) などが使われます。エネルギー効率を計算する際に一番重要な項目は投入するエネルギーです。これがエネルギー効率の指標であり、小さいほど効率的であることを示します。
たとえば、パッシブ住宅は暖房システムを使わずに過ごすことができ、必要なエネルギーを主に太陽などのパッシブ エネルギー源で賄うことができるため、平均的な住宅よりも性能が大幅に高いのが特徴です。一方、電気自動車のエネルギー効率クラスを計算する際、ベンチマークは重量当たりのCO2排出量などのパラメータが使われます。
欧州では消費者が自動車、住宅、家電を購入する際、エネルギー効率クラス (EEK) を重要な購入判断材料として使うのが一般的です。EEKはA (緑) からG (赤) まであり、色分けされています。1990年代から家電のクラス指定が法律で義務化されており、EUエネルギーラベルで表示することになっています。ところで、エネルギー効率クラスを比較し、高いお金を出して上のクラスの製品を購入することに意味があるのでしょうか。
もちろん、意味があります。なぜなら、エネルギー効率クラスは利用状況や目的に応じたパラメータを基に設定されているからです。そのため、結果を正しく比較することができ、透明性が保たれているのです。多くの分野でこの情報は非常に重要とされているため、消費者だけでなく政治家からも強いニーズがあります。この制度が特に有益な理由はAやBなどのエネルギー効率クラスがメーカーや業界団体の裁量に委ねられているのではなく、消費者が信頼できる一般的に妥当な根拠に拠っている点です。また、エネルギー効率クラスの達成をめぐって競争が生まれるため、公正な競争を促す効果もあります。
一般的に、長期の持続可能な投資における決断ではエネルギー効率クラスが信頼できるガイドになります。近年では環境意識や持続可能なソリューションのニーズが高まっているため、消費者も企業もエネルギー効率をますます重視するようになっています。民間セクターと経済セクターの再生可能エネルギー分野ではエネルギー効率が重要な役割を果たしています。それでは、産業と日常生活における3つのエネルギー効率の例を見ながら、エネルギー効率クラスの選択に不可欠なパラメータとエネルギー効率クラスにまつわる開発に最適なソリューションを説明しましょう。
欧州では2011年から自動車ディーラーとメーカーにCO2ラベルで燃料/エネルギー消費量とエネルギー効率クラスを表示するよう義務付けています。ラベルはA+ (低CO2排出) から G (高CO2排出) まで分類されています。ところが、消費者は自動車の購入時に本来比較できない項目で比較してしまいがちです。たとえば、消費者の目には大型SUVがコンパクトカーと同じカテゴリーにあるように見えてしまいます。車両の重量当たりのCO2排出量が同程度なので、どちらも緑のマークがついていますが、当然ながらSUVはコンパクトカーよりも多くのエネルギーを消費します。しかし、このサイズの他のモデルと比較すると、緑のマークになるのです。ですから、簡単に比較するときは重量当たりの数値になっていることを念頭に置きましょう。
また、 CO2ラベルはメーカーが用意した理想的な環境を基に判定されていることが一般的なため、明確な指標にならない場合もあります。粒子状物質や窒素酸化物などの大気汚染物質排出レベルもわかりにくいことが多いです。とは言え、エネルギー効率の高い自動車は悪影響のある排出を抑制し、長期的には環境を守り、コストを削減することができることは確かです。
CO2排出量の抑制に焦点を絞るなら、エネルギー効率の高い電気自動車が最先端の選択肢になります。小型車から大型車まで、バッテリー駆動システムによって排出量ゼロのドライブ モビリティがすでに実現されています。今後、関連技術と半導体ソリューションのさらなる発展が鍵となるでしょう。インフィニオンでは電動モビリティの誕生直後からその分野に力を注いでおり、たとえば、インフィニオンの技術によってバッテリーから推進力への変換が実現しています。エネルギー効率も向上しており、バッテリーからモータへのエネルギー変換効率が上がれば、航続距離が長くなります。インフィニオン テクノロジーズとその半導体ソリューションはすでにバッテリー充電システムのスピード向上とインフラ拡大に大きな役割を果たしています。
洗濯機、ドライヤー、冷蔵庫、食器洗浄機、換気扇、テレビなどの家電の消費電力は生活のエネルギー消費において非常に重要なコストであり、環境要素です。実際、人々は毎日多くの家電を使用しており、エネルギー効率クラスの最も優秀な冷蔵庫や洗濯機を選ぶことも少なくありません。エネルギー効率を可能にするインテリジェントなスマートホーム システムなどのデジタル ソリューションも購入の際の重要な判断材料になりつつあります。スマートホームについて、詳しくは「知っておきたいスマートホーム」をご覧ください。
エネルギー効率による節約効果がとりわけ大きいのが、ドライヤーと食器洗浄機です。エネルギー効率クラスGの旧型ドライヤーをクラスBの新型に買い換えると、年間電気代を最大70%抑えることができます。ユーロに換算すると、100ユーロ以上の節約になります。食器洗浄機の場合はクラスGの旧型モデルからクラスBの新型モデルにすると、毎年最大30%の電気代が浮きます。これは20ユーロ以上に相当します。購入の際は節水能力も判断材料になります。
欧州では2014年から建物ごとのエネルギー効率認証が始まっており、建物のエネルギー効率クラスがA+ (非常にエネルギー効率が高い) から H (エネルギー効率が低い) まで分類されています。エネルギー効率認証は2009年以降、建物の売り手や権利者に取得が義務付けられており、遅くても内見の際に利害関係者がしっかり確認して比較検討できるようになっています。建物のエネルギー効率クラスの判定には、施工状況、断熱、気密性が重要な要素とされます。グレード評価はエネルギーの年間消費量が1平方メートル当たり30kWh未満ならA+、250kWh以上ならHとなります。この数値に基づいて、住居スペースにおける平方メートル当たりのエネルギー コストを推計することが可能です。
リノベーションを行う際にエネルギー効率を重視すれば、効率が向上して節約になるだけでなく、住宅環境や生活の質も向上します。その意味で、最適化は非常に大きな可能性を秘めているといえます。特に環境面を考えると、欧州だけで建物システムはエネルギー消費量の40%を、CO2排出量の36%を占めているからです。
リノベーション以外でも、スマートビルのほか、予防保全などのスマート保全のコンセプトは持続可能な将来のエネルギー供給に向けたソリューションであるといえます。スマートビルは相互接続されたセンサーが備わっており、エネルギー消費量を約30%削減できます。また、スマートビルではスマートな予防保全と修繕 保全作業の両方を日常運用に取り入れることが可能です。インフィニオンは両方の分野で先進的なソリューションを提供しており、インテリジェントな建物アプリケーションとスマートな保全のポートフォリオでさらなる開発を進めています。それによってエネルギー消費量の大幅削減とCO2排出量の削減が可能になり、持続可能な気候の実現につながります。
今後は「グリーン」製品、環境に優しいビジネス、デジタル ソリューションなしには考えられない時代が到来します。世界の顧客と政治家の両方が改善を求めています。これまで産業界はエネルギー効率とエコロジーをキーワードにイノベーションを推進し、競争力を維持してきました。
製品開発に加え、エネルギー効率の高い自動化こそが、持続可能なソリューションとCO2排出削減を推進する鍵となっています。基本材料からエネルギーまで、資源の利用はデジタル アプリケーションによって最適化され、効率化が進んでいます。分析、予防保全、自動アップデートにより、消費量も少なくなっています。
インフィニオンは広範な半導体ソリューションのポートフォリオを提供しており、エネルギーの生成から伝達、貯蔵、消費まで産業プロセスの価値とインテリジェンスを高める新しいアプローチを開発しています。40年以上にわたってエネルギー効率ソリューションによってグリーン エネルギーを、どの分野でどのように実現したか、詳しくは「エネルギー効率- グリーン エネルギーの実現」をご覧ください。
産業セクターと民間セクターにおけるエコロジカルな開発を推進するという目的のもと、広い範囲に影響力のある法案が作られ、開発の促進が始まっています。焦点が置かれているのは包括的な戦略であり、経済的な問題だけでなく気候変動問題、環境保護も中心的なテーマとなっています。その一例が「欧州グリーンディール」です。欧州グリーンディールでは欧州が2050年までにクライメート ニュートラルを達成し、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減する世界初の大陸になるという、欧州連合の目標が掲げられています。欧州連合は2019年12月に合意された気候変動問題に関するパリ協定を受け、エネルギー効率政策パッケージを策定しました。その内容は、エネルギー、交通、産業にまたがり、広い範囲に影響を及ぼすものになっています。
ドイツでは政府が気候変動問題対策法を制定し、欧州よりもさらに厳しい政策を国レベルで設けています。たとえば、2045年までに気候中立を達成し、温室効果ガス排出量を65%削減するという目標を掲げており、欧州グリーンディールよりも5年早く10%厳しい目標となっています。目標達成のため、80億ユーロの緊急プログラムを策定し、気候変動問題に対応したモビリティと持続可能な林業と農業を推進しています。その他にも、効率的な建物 (BEG) の連邦助成や一般家庭、企業、自治体を対象とした助成など、広範な施策を展開しています。
また、再生可能エネルギーの拡大を促す再生可能エネルギー源法 (EEG) においても連邦レベルでエネルギー効率助成を提供しています。施行された2000年以降、柔軟に継続的発展を遂げており、気候変動問題への対応と環境保護に役立っています。
経済や民間レベルの視点で見たとき、今後のエネルギー効率関連のトピックは財政的な問題がついてまわるでしょう。建物や電動モビリティなどの分野ではすでに助成金や補助金が非常に重要になっており、消費者にとって持続可能なソリューションは取得に高い費用がかかる場合が多々あります。また、企業は国際競争に懸念を抱いているため、いまだに持続可能なアクションを本業の目標とするのではなく、社会貢献活動の一環としています。本来なら持続可能なビジネスモデルを適用すれば、環境を保護できるだけでなく、生産コストの削減と「グリーン」な新製品を生み出して競合の一歩先を行けるはずですが、現状はそうなっていません。
気候変動問題に立ち向かうには、一般消費者と企業の両方が持続可能な開発とライフスタイルに切り替える以外に方法がありません。この瞬間においても、新しいエネルギー源から供給されるよりも多くのエネルギーが消費されており、消費量は上昇の一途をたどっています。エネルギー効率ソリューションの進化と将来世代のためのエネルギー供給の確保を実現するうえで鍵を握っているのは、社会全体のコミットメント、企業の思い切った決断、世界の政府のサポートなのです。社会と環境のためにインフィニオンが継続している、持続可能で社会的責任のある取り組みについて、詳しくは「企業の社会的責任」をご覧ください。
最終更新: 2022年2月