現在のPSoC™

サイプレス (2020年4月よりインフィニオン) が最初のプログラマブル システムオンチップ (PSoC™) をローンチしたのは8ビット マイクロコントローラー (MCU) が市場を飽和している頃でしたが、急速に成長する市場への足がかりを築くために、サイプレスは大胆な一手を取りました。幅広いラインアップをもつ競合他社と正面から対決するのではなく、プログラマブルなアナログおよびデジタル機能という重要な差別化機能をPSoC™ 1に組み込んだのです。

PSoC™ が市場を席巻

PSoC™はにわかに画期的な存在になりました。ハードウェア エンジニアにとってPSoC™を選択することは、優れた8ビットM8Cマイクロコントローラーのコアのみならず、コンフィギュレーション可能なアナログおよびデジタル機能のホストも手に入れることを意味しました。実際に、一個のICに多数の回路機能を搭載できるようになりました。回路設計の観点からも魅力的な試みであり、ビジネス的な観点からもとても理に適っていたのです。しかしマイクロコントローラーを選択することは、多くのエンジニアにとっては数多くの部品の一つの選択にすぎません。これ以外にも、アナログやデジタルの入出力IC、信号調整回路、ディスクリート ロジック、その他ミックスドシグナル機能を選択しなければなりません。部品表 (BOM) は増え続け、部品コストも上昇していきました。

早い段階でPSoC™ 1を採用したユーザーは、PSoC™上に多数のサポート機能をコンフィギュレーションでき、完全にマイコン コアから独立して実行できることを理解しました。オペアンプを組み込む必要がありますか? それならば、PSoC™ Creatorソフトウェア ツールを使って部品をドロップインしてから、基板設計に合わせて入出力端子を割り当てるだけです。アナログやデジタルなど、より複雑な機能は、個々のプリミティブなビルディング ブロック機能から組み立てが可能です。

さらに、PSoC™にはリコンフィギュレーション可能という、かつてなかったマイクロコントローラーの機能が導入されました。PSoC™は一瞬にして、自動販売機のコイン検証アプリケーションとして動作が可能になります。かと思うと、再び一瞬でDTMF (デュアルトーン多重周波数信号) ステータス報告機能としてリコンフィギュレーションして、本来のタスクに戻すことも可能です。また、従来は「青色ケーブル」を使って基板を作り直す必要のあった土壇場での基板設計変更にも対応しています。

PSoC™が部品点数にどのような影響を与えるかを示す一例をみてみましょう。ホテルのカード式ドアロックのあるメーカーは、90品目あったBOMを20品目に削減することができました。設計者は使用するレイヤーを減らし、PCBレイアウトをより小さくすることで簡素化したのです。

PSoC™ 3やPSoC™ 5に続き、PSoC™ 4およびPSoC™ 6のローンチでますます強力になっているPSoC™

初めてPSoC™について知ったハードウェア エンジニアの中には、まるで魅力的な品々で一杯のキャンディストアに足を踏み入れた子どものように、PSoC™のもつ可能性に驚く人もいました。実際にPSoC™を使用することになれば、その可能性は事実上無限です。

エントリー レベルのPSoC™ 1のリリースから10年が経ち、10億個以上のデバイスを出荷してきたサイプレスは、PSoC™ 3およびPSoC™ 5シリーズを発表しました。PSoC™ 3は8ビット8051 MCUコアを、PSoC™ 5は32ビットArm® Cortex® M3コアを採用しています。両シリーズとも、PSoC™の柔軟性、統合性、およびプログラマブル機能を拡張しています。また、静電容量式タッチセンシング用のCAPSENSE™など、アプリケーション固有の機能も開発されました。

2013年、PSoC™第4世代が市場に投入されました。PSoC™ 4では、32ビットArm Cortex-M0コアを導入し、その後、Arm Cortex-M0+シリーズとBluetooth Low Energy (BLE) 2.4 GHzトランシーバーを追加し、製品ラインアップを拡大しました。

2017年に発売されたPSoC™ 6は、PSoC™市場のリーダーとして第6世代の到来を告げました。Arm Cortex-M4およびCortex-M0+コア、ダイナミック電圧および周波数スケーリング (DVFS) を組み合わせた超低消費電力のPSoC™ 6は、IoTアプリケーションに特化した設計になっています。

この10年間で、エンジニアリングの重点が徐々にハードウェア ベースからソフトウェア対応に移行しています。PSoC™ は、両方の組み込み開発手法のニーズに対応し、あらゆるアプリケーションの要件に対応する設計の柔軟性と迅速な試作から生産までのプロセスを提供し続けています。

現在のPSoC™ラインアップ

インフィニオンのPSoC™ ラインアップは、現在32ビットArm® Cortex®-Mコアをベースにしたプログラマブルでリコンフィギュレーション可能な世界的なシステムオンチップ プロセッサの1つと見なされています。

PSoC™ 6

あらゆるIoTアプリケーションの開発加速を目的に設計された超低消費電力のデュアルコアPSoC™ 6ファミリーは、Arm Cortex-M4およびCortex-M0+コアを搭載しています。組み込み開発者は、バッテリー駆動のアプリケーションに最適なデュアルコア アーキテクチャにより、消費電力と性能のために設計を最適化することができます。

セキュリティは他のIoTアプリケーションと同様に基本的要件なので、PSoC™ 6にはArmの最新のプラットフォーム セキュリティ アーキテクチャ (PSA) が組み込まれています。プログラマブルな機能には、コンフィギュレーション可能なアナログ部品と固定されたアナログ部品からアナログ フロントエンド機能を設計できる機能も含まれます。PSoC™ユニバーサル デジタル ブロック (UDB) を使用したデジタル プログラマブル機能では、デジタル出力センサーICやE-Inkディスプレイとのインターフェースが容易に実現できます。PSoC™の固定機能には、スクリーン ベースの民生およびIoTアプリケーションで必要とされるマルチタッチのCAPSENSE™静電容量式センシングが含まれています。

PSoC™ 6シリーズは、環境要件が厳しい車載インフォテインメントや制御アプリケーション向けには、車載規格に準拠したGen6およびGen7のPSoC™デバイスで、最大15インチまでのスクリーン サイズにシングルタッチ、2本指タッチ、マルチタッチの機能を提供します。PSoC™車載用製品ラインアップには、8.5インチ未満のスクリーン向けの低価格なPSoC™ベースのタッチ コントローラーと、さらに大きなスクリーン サイズ向けの高性能な製品があります。

PSoC™ 4

業界で最も柔軟でスケーラブルな低消費電力ミックスドシグナル アーキテクチャを提供するArm Cortex-M0 / Cortex-M0+ベースのPSoC™ 4は、あらゆる複雑な組み込みシステムに最適です。PSoC™ 4には、プログラマブルなアナログ フロントエンド機能と、USB、CAN、BLE などの幅広い接続性オプションが含まれています。

PSoC™ 4のラインアップには、一般産業用アプリケーション向けのデバイスと、車載規格に準拠した製品があります。AEC-Q100準拠のAutomotive PSoC™ 4シリーズは、Arm Cortex-M0+コアに、プログラマブルでリコンフィギュレーション可能なアナログおよびデジタル ブロック、CAPSENSE™静電容量式タッチ機能、および汎用I/Oを統合しています。またこのシリーズは、SENT、CAN、LIN、CAN FDといった一般的な車載ネットワーク通信インターフェースすべてに対応しています。

PSoC™ 4 HVファミリーは、12 Vの高電圧動作とインターフェースに対応しており、多くの自動車用センサー アプリケーションに適しています。電気自動車に使用されるバッテリー管理システム (BMS) はその一例です。HVファミリーは、ISO 26262で定義された機能安全度規格ASIL-Bに準拠しています。静電容量式タッチセンシング機能を内蔵しているため、快適性やドア制御に関わるHMI制御機能を組み込むことができます。

PSoC™ 5LP

Arm® Cortex®-M3コアをベースに、プログラマブルでリコンフィギュレーション可能なアナログ、デジタル機能を包括的に搭載したPSoC™ 5LPシリーズは、ウェアラブル機器やスマート モバイル機器向けに最適化されています。複数のパワー ドメインと幅広い動作電圧に対応しているPSoC™ 5LPは、24個のUDB、24ビット デジタル フィルター ブロック、および広範なアナログ フロントエンド コンポーネントを統合しています。

PSoC™ 開発リソース

PSoC™を使用したアプリケーションの開発は、これ以上ないほど簡単に開始できます。Eclipseを使用した統合開発環境 (IDE) に慣れている組み込みソフトウェア開発者にとって、インフィニオン ModusToolbox™はソフトウェアを作成するのに便利なアプローチになります。ModusToolbox™は、インフィニオンのマイクロコントローラーや接続ICの全範囲に対応しており、エッジ接続されたIoTセンサーから車載HMIまで、あらゆる形態の組み込みシステム開発に適しています。

開発サポートはIDEにとどまらず、次のようなサービスも展開しています。

Infineon Developer Community: 技術的なあらゆる質問に対して回答を検索/投稿できる開発者向けコミュニティです (https://community.infineon.com/)。

PSoC™評価ボード: PSoC™ 5、PSoC™ 4、PSoC™ 6用の評価ボード、開発キット、接続オプションの包括的なラインアップを提供しています (PSoC™評価ボード)。

PSoC™リファレンス デザイン: PSoC™アプリケーション向けの120以上のリファレンス デザインを提供しています (PSoC™リファレンス デザイン)。

インフィニオン/サイプレスのYouTubeチャンネル: YouTubeには、何百時間もの有益で深い技術的なコンテンツがあります。ハンズオン チュートリアル シリーズや、PSoC™のコンフィギュレーションに関して特定の側面を取り上げたビデオもあります。また、イノベーター、組み込み開発者、ディストリビューターによるサードパーティーのコンテンツもあります。(https://www.youtube.com/c/CypressSemi)

PSoC™に関する参考書籍もあります。「Learn Digital Design with PSoC, a bit at a time』 (英語版、CreateSpace Independent Publishing Platform発行、2014年8月、Dave Van Ess著) は、PSoC™でさまざまなデジタル論理回路を実装するための実践的な側面に焦点を当てた優れた書籍の一例です。この本では、PSoC™ 4 Pioneerボードを使用して読者が試作できる42のデジタル回路が紹介されています。

PSoC™ - IoTに特化して設計課題を解決

PSoC™は、32ビットのArm Cortex-Mxコアを使用したプログラマブルでリコンフィギュレーション可能な世界的なシステムオンチップ プロセッサの一つです。

さあPSoC™を始めてみましょう!