日独オクトーバー技術交流会IoT/ICTイノベーションデー
イベントレポート

社会課題を解決する最先端のイノベーションに、
日独のリーダーによる熱い議論が交わされた一日。

去る2021年10月26日、「日独オクトーバー技術交流会 IoT/ICTイノベーションデー」     (主催:在日ドイツ商工会議所) が、さまざまな公的機関の協力のもとリアルとオンラインでのハイブリッドで開催された。会場となった東京大学 伊藤国際学術研究センターやオンラインには、社会課題を解決するためのイノベーションを求め、多くの方々が集った。企画事務局を担当したインフィニオン テクノロジーズから本交流会をレポートする。

会に先立ち、主催を代表し、在日ドイツ商工会議所マークゥス シュールマン氏 (専務理事/駐日ドイツ商工特別代表) より開会の辞を述べた。

さらに来賓挨拶として、幼少期ならびに外交官としてもドイツで過ごされた衆議院議員の城内 実氏 (自民党国会対策委員会 副委員長 自民党広報本部 本部長代理) がビデオメッセージを通じて、ドイツと日本による新しい技術開発を目指すリーダーシップに対する期待を語った。

また、総務省の北神 裕氏 (国際戦略局 国際経済課 課長) が、日独両国は深いつながりと多くの共通点があることを挙げ、テクノロジー分野を含む多様な分野での日独連携の重要性および今後の期待ついて話された。

インフィニオンからは川崎 郁也氏 (代表取締役社長) が壇上に立ち、世界のイノベーションのハブである東京で日本とドイツの技術交流会を開催する意義が極めて大きいこと、日独連携ならびにグローバルにおける東京のイノベーション拠点としての重要性を訴えた。

ダイジェスト映像

当日のトークセッション、展示・デモの様子をご覧いただけます。

 

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日程 2021年10月26日(火)
会場 東京大学 伊藤謝恩ホール
主催 在日ドイツ商工会議所
後援 総務省
ドイツ連邦共和国大使館
トロンフォーラム
一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会
特別協力 J-Startup
企画事務局 インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社

講演

基調講演

「グローバルメガトレンド」

Dr. Helmut Gassel (Infineon Technologies AG Chief Marketing Officer)

「グローバルメガトレンド」と題した基調講演では、Dr. Helmut Gassel氏(CMO, Infineon Technologies AG)がオンラインで登壇し、世界が直面する社会課題として「人口爆発とそれに伴う社会情勢の変化」、「気候変動と資源の枯渇」、「都市への集中」、「デジタルトランスフォーメーション (DX) 」4つのメガトレンドを解説。豊かさを損なうことなく、社会課題を解決して持続可能な社会を築くためには、さらなる技術革新が欠かせないと強調した。

パネル討論

「社会課題解決に向けた日独のイノベーション最先端」

司 会:大久保 琢史 氏(日本電気株式会社 Global Head of Thought Leadership)
    福島 優子 氏(NHK ワールド 英語キャスター)
登壇者:大井川 和彦 氏(茨城県知事)
    坂村 健 教授(東洋大学 情報連携学部(INIAD)学部長)
    Mr. Adam White(EVP & CMO Power & Sensor Systems, Infineon Technologies AG)

社会課題を最も肌で感じている行政の当事者と、課題解決に向けて取り組む技術開発の最前線にいる日独の有識者が、今求められているイノベーションについて議論した。行政の効率化 (ひいては行政サービスの向上の実現) 、高齢者のデジタルリテラシー向上、人手不足、インフラおよびインフラサービスの維持、という課題が提起され、現在どのようなアプローチがあるか、という視点で、たとえば、Open Smart URというURと連携した高齢者向けスマートホームや、INIADにおける人材育成などの取り組みが紹介された。また、デバイスレベルでは、特にセンサーソリューションが説明された。三者三様の視点から日独のイノベーション最先端について理解を深めるセッションとなった。

取組紹介

日独・産学連携

最先端の事例として、前セッション登壇者である坂村教授が率いる東洋大学 情報連携学部 学術実業連携機構 (通称 INIAD, cHUB/以降、INIAD) の取り組み事例として、インフィニオンとのアプリケーション探索の活動が紹介された。日本発のソリューションであり、今回のデモ出展者でもあるugo社のアバターロボットが併せて紹介され、改めてさまざまなレベル感のアプローチが進行していることを参加者に共有するセッションとなった。

ファイヤーサイドチャット(談話)

「スマートシティに向けたモビリティサービス」

司 会:福島 優子 氏(NHK ワールド 英語キャスター)
登壇者:大橋 譲 氏(株式会社ローランド・ベルガー 代表取締役)
    西城 洋志 氏(ウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社 事業開発・                        事業戦略バイス・プレジデント/ウーブン・アルファ株式会社 取締役)
    クラウス・メーダー 氏(ボッシュ株式会社 代表取締役社長)
    Mr. Peter Schaefer(EVP & CMO Automotive, Infineon Technologies AG)

ファイヤーサイドチャット(談話)「スマートシティに向けたモビリティサービス」では、高齢化や人手不足の進展、デジタルネイティブ層が早晩消費者市場の中心となる事実などが指摘され、また、モビリティがどう変わっていくかと投げかけられた。ただし、単に都市運営やクルマの自動化のみならず、住民の信頼が得られる自動化システムを作り上げる技術の確立が何より重要になってきた。それを支えるシステムの視点とあらゆるスマートシティも最終的に重要となるのが信頼性のあるハードウェアだという、よりデバイス目線で議論が展開され、。参加者からも高い評価を得たセッションとなった。

ピッチ

日独最先端イノベーション Executive Flash Talks

松井 健 氏(ugo株式会社 代表取締役CEO)
関口 哲平 氏(BionicM株式会社 取締役COO)
諸隈 立志 氏(ユーシーテクノロジ株式会社 代表取締役)
Mr. Oliver Stahl(CEO, Robotise AG)
Mr. Claude Toussaint(Managing Partner, navel robotics GmbH)

Executive Flash Talksでは、日独の各社のCEOより、従来人手で支えてきたサービス業務の代替となる、あるいは生活空間で人々と共存する、そして暮らしを助ける社会的知能を備えたロボットや、筋肉の力を備えたパワーアシスト義足、スマートビルの実現に欠かせないIoTによる設備の制御システムといったいずれも人手不足や高齢化といった社会課題を克服に向けた最先端ソリューションが紹介された。日本からも多くのイノベーションが生まれていることを内外に共有するセッションとなった。

ファイヤーサイドチャット(談話)

「スマートビルが目指す将来」

司 会:三ツ谷 翔太 氏(アーサー・ディー・リトル・ジャパン株式会社 パートナー)
登壇者:松井 健 氏(ugo株式会社 代表取締役CEO)
    諸隈 立志 氏(ユーシーテクノロジ株式会社 代表取締役)
    Mr. Dominik Bilo(EVP & CMO Industrial Power Control, Infineon Technologies AG)

スマートビルが提供する価値と、その実現に向けて必要になる技術などについて議論を実施した。スマートビルの典型的課題がエネルギーマネジメントである、という提起によりエネルギー効率に対する取り組みが紹介された。EUでは、住宅用と非住宅用を合わせた建物で、全エネルギー消費やCO2排出量、さらにドイツ政府は、2050年までに既存の建物のエネルギー消費を削減する目標を取り上げた。目標のための重要な取り組みとしてスマートビルが挙げられた。

ビルを快適で便利に利用できる状態に維持するためのメンテナンスは欠かせず、また省エネルギー化においては、センサーの有効活用が鍵となる。そしてビル内の多くの機器や設備あるいはサービスロボットを連携制御するためにAPIの連携が欠かせないと談じられ、改めて日本が課題の中心にいることが顕在化された。

パネル討論

「イノベーションの果たす役割」

司 会:川崎 健史 氏(富士通株式会社 Strategic Growth & Investment室                                                     シニアディレクター/大学院大学至善館 特任准教授)
登壇者:越塚 登 教授(東京大学 大学院情報学環)
    石井 芳明 氏(経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室長)
    中村 友哉 氏(株式会社アクセルスペース 代表取締役CEO)
    Mr. Thomas Rosteck(Division President Connected Secure Systems,                                                      Infineon Technologies AG)
ゲストコメンテーター:                                                                                                                                                                  Dr. Andreas Schumacher(EVP Strategy, Mergers & Acquisitions,                                                                 Infineon Technologies AG)

現在直面している社会課題は、一方で新たな事業機会にもなり得る。その課題をいかに事業機会に転換していくか、そこで日独両国が果たすべき役割について議論が展開された。日本政府は、スタートアップの育成 支援に取り組んでいる。その一方で、大企業の競争力を維持するためにオープンイノベーションの強化も重要になってきた。アカデミアは、スタートアップの母体であり、既存企業に新しいアイデアや技術を供給する役割も担っている。近年、若い人のベンチャー指向が高まり、ビジネス イノベーションを生み出して世の中に貢献することを魅力的に感じるようになってきたようだ。失敗を許容することの重要性や大企業でいかにイノベーションを加速するかという視点で議論を深めた。総括として、イノベーションの加速には多様性と協調が重要であり、日独はさらに連携を強化すべきである、という視点を浮き彫りにする非常に有意義なセッションとなった。

イノベーション展示コーナー

今回が第1回となった日独オクトーバー技術交流会は、くしくも日独交流160周年という節目で開催された。新型コロナウィルスの感染予防に配慮して、会場でのリアルなイベントとオンラインでの講演などの視聴を合わせたハイブリッド形式で行われた。また、会場の多目的室では、日独のスタートアップ企業などテックリーダー11社による最先端技術のデモが紹介された。